お役立ちブログ

ビジネス

公開日:

更新日:

信義則(信義誠実の原則)とは?派生原則や契約との関係を解説!

信義則(信義誠実の原則)とは?派生原則や契約との関係を解説!

「信義則ってなに?」「過去の適用事例は?」「ビジネス・契約上での信義則は?」という悩みをお持ちでしょうか?

今回の記事では信義則について詳しく解説していきます。信義則について知りたいビジネスパーソンはぜひご参考ください。

信義則とは

信義則(しんぎそく)とは、「社会共同生活において、権利の行使や義務の履行は、互いに相手の信頼や期待を裏切らないように誠実に行うべきである」という原則です。この原則は、契約の趣旨を解釈する上での基準にもなるとされ、当事者双方が、相手が持つであろう正当な期待に沿うような言動が求められます。要するに、「社会は信頼によって成り立っているのであるから、当事者同士の信頼を裏切らないように行動せよ」ということです。

例えば、あなたと友人はAという場所で会う約束をしていたとします。そこで友人が待ち合わせのAではなくBという場所に着いて、約束の時間を過ぎると連絡もせずに帰りました。あなたは友人からの連絡もなくAで待ちぼうけをしてしまいました。この場合は、あなたは友人に対して少なくともいい思いはしないと思います。

これは普通にありそうな話ですが、信義則上で考えると待ち合わせの場所を間違えたのに、相手に連絡もせずに帰った友人は信義則に反したことになります。

信義則の由来は?

信義則は最初フランスやドイツなどのヨーロッパで条例制定が行われ、その後に日本に持ち込まれ民法化されたことが由来です。信義則は昭和22年に民法第1条に追加された概念になります。実際に信義則が法として制定されたのは、平成8年に施工された訴訟がきっかけです。信義則は権利の行使や義務の履行だけでなく、契約解釈の基準にもなります。

加えて、具体的な条文のない場合に規約を補填する役割も持ちます。

信義則に反する具体例とは

信義則に反する具体例を1つ紹介します。

賃借人が家賃を払わないのにも関わらず、保証人が払ってくれるだろうという期待により保証人に連絡をせず、賃貸借契約を更新し続けて未払い家賃が過大になってから保証人に請求するケースです。この場合に、賃貸人は賃借人が家賃を払わないので契約更新をせずに保証人に請求することが可能なはずです。それを行わずに未払家賃が過大になってから保証人に請求するのは、保証人の信頼を裏切る行為です。
賃貸人が保証人に全額を請求することは信義則に反するので認められません。

信義則が行使された判例

信義則が行使された判例として1925年にあった「大豆粕深川渡し事件」を紹介します。

本事件は業者間による取引での事件の裁判です。
2つの業者は、取引を指定した場所で行う契約を締結しました。売主はそこで引き渡しの準備を行っていましたが、買主は場所が不明確であることを理由に取引場所に来ませんでした。それによって取引が行われず、買主が売主に対して契約解除と損害賠償を求めたのです。

裁判所の判決によると、買主が売主に取引場所を連絡して聞くべきであったとして、それを怠った買主は「代金支払い義務の履行遅延の責任を負う」との判決を下しました。

引き渡し場所がわからなかったのに、場所を売主に連絡して聞かなかった買主の不誠実な行動が信義則に反すると判断したことによる判決事例です。

信義則の派生原則

信義則はどちらかと言うと抽象的な概念の原則になります。
原則を具体化するために、以下の4つの派生原則が作られました。

  1. 禁反言の原則
  2. クリーンハンズの原則
  3. 事情変更の原則
  4. 権利失効の原則

それぞれ異なる解釈の原則なので1つずつ把握していきましょう。

禁反言の原則

禁反言(きんはんげん)の原則とは、「一方の自己の言動(または表示)により他方がその事実を信用し、その事実を前提として行動(地位、利害関係を変更)した他方に対し、それと矛盾した事実を主張することは許されない」という原則です。

友人がAと言っておりそれを信じ行動したら、翌日にはAでなくBと主張した、という場合に友人がとった言動は矛盾しています。このような言動は、禁反言の原則に反します。

具体例として、不動産契約の際に買主が「キッチンを新調してくれたら購入する」と売主に約束していたとします。売主が言われた通りにキッチンを新調したのにもかかわらず、買主は物件を購入しませんでした。

これは買主が最初に「キッチンを新調してくれたら購入する」と言っていたのにその言動と矛盾する主張をしたので禁反言の原則に反します。

クリーンハンズの原則

クリーンハンズの原則とは、「法を守る者だけが法の尊重・保護を求めることができる」という原則です。要するに、法律違反をしている人を法律によって助けられないという解釈になります。

具体例として、「不倫相手に不動産を購入したがこちらの事情で返して欲しい」と言った件について法律は助けてくれません。

これは民法708条に記載があります。

「不法原因給付については,利得者 (受益者) の側だけに不法の原因がある場合 (たとえば相手の困窮に乗じて暴利を得た者など) を除いて,不当利得を認めず,したがって給付したものの返還請求は否定される」

つまり、不法な原因で他人に物を与えた場合は、その物を取り返したくても法律は助けてくれないということです。不動産を与えた者は既に不倫をしており、信義則上不誠実であるため、不倫相手の不動産を返還してもらいたくても法律を用いて請求することができません。

事情変更の原則

事情変更の原則とは、「契約締結の際に、予見不可能な事情が発生した時は契約内容の変更は可能である」という原則です。要するに、状況によっては変更も臨機応変に対応できるという解釈になります。契約を締結した場合は契約内容を遵守することが課されます。しかし契約内容を強制することが不合理であると判断された時は、信義則に則って変更可能であるという考えです。

ただし、契約の効力に対する例外的な対応であるため、適用には厳格な条件があります。

条件として以下の通りです。

  1. 契約後に契約の基礎たる事情に著しい変化が生じたこと
  2. 事情変更が契約当初予見不可能であったこと
  3. 事情変更の結果、もとの契約の拘束力を承認することが信義則に反する結果となること

これら3つの条件を全て満たす必要があります。

権利失効の原則

権利失効の原則とは、「権利者が永い間権利を行使しなかったことで、相手がもう権利は行使されないだろうと信じていた場合、突然その態度を変えて権利行使することは許されない」という原則です。

要するに、長期間権利行使がなければ、相手はもう権利行使はないと判断するため、連絡なく急に権利行使をすることは相手の信頼を裏切ることになるということです。

契約における信義則

契約において信義則はどのように用いられるのでしょうか?

  • 契約書
  • 契約交渉段階

上記の2つのケースについて解説していきます。

契約書

契約書の冒頭に「信義則」に似た条項が規定されていることがあります。
内容は下記の通りです。

(例)第1条
「甲および乙は、相互反映の理念にもとづき、信義誠実の原則に従って、本契約を履行するものとする。」

実際にはこのような条項は法的に必要ありません。信義則は民法に規定されている法律の基本原則であるからです。そのため契約書に記載がない場合でも信義則は当然適用されるため、契約上問題ありません。

契約交渉段階

契約交渉段階では、信義則により説明責任と情報提供義務の両方が課されることがあります。基本的には契約交渉や契約締結に関して必要な情報は、契約当事者が自分で調べることが原則です。しかし、契約交渉段階でも各契約当事者は、関係のない第三者とは異なり緊密な関係であるため、信義則に基づいて説明責任・情報提供義務が課されます。

説明責任・情報提供義務を果たさなかった場合、信義則に反する不法行為となり、損害賠償請求を課される可能性もあります。民法上明文化はされていませんが、説明責任と情報提供義務は無条件で発生するためしっかり責務を果たしましょう。

まとめ

信義則は権利と義務それぞれを行う立場の人が、相手の期待を裏切らない誠実な行いをすることを定めた原則です。信義則が具体化した派生原則や、実際に適用された判例も数多く存在します。社会的なモラルが重視される今だからこそ、信義則を誠実に守り抜くことが重要になるでしょう。特に法律に関する仕事をする人には必須の知識であるため、しっかり押さえておきましょう。

紙・印鑑、郵送、すべてさようなら!サインタイムは、従来の紙のプロセスを電子上で実現できる電子契約サービスです。
使い方がとても簡単で様々な業界のお客様よりご利用いただいております!
まずは、30分間のZoomにてアプリのデモをご体験しませんか?

サインタイムの30分相談窓口

電子帳簿保存法やペーパーレス化についてなど、まずは気軽にご相談ください。

今すぐ予約

資料請求