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甲乙の意味とは?正しい使い方を理解して契約書に活用しよう

目次
日常生活の中でも「甲乙つけがたい」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。ビジネスのシーンでは、主に契約書を締結する際などに「甲」と「乙」をよく見かけます。
契約書の甲乙表記には、どのような意味がありどのような使い方をするのが適切なのでしょうか。ここでは、契約書内の甲乙について解説します。
甲乙とは
「甲乙」には、「第一と第二」「優れているものと劣っているもの」といった意味があります。
一般的に使われる「甲乙つけがたい」という言葉には、「第一と第二の優劣を決めづらい」という意味があります。
契約書上でも甲乙が使われることがありますが、この時の甲乙は互いの条件を分かりやすくするために使用されます。そのため、優劣をつけるものではありません。
一般的に用いられる場合でも、契約書で用いられる場合でも、甲と乙にはどちらが自分(どちらが相手)なのかといった決まりがない点を理解しておきましょう。
甲(こう)の意味と読み方
甲は「こう」(きのえ)と読み、中国発祥の数詞である十干の第一番目の符号にあたります。
当事者の関係や順番を示す場合でも、契約書上で使われる場合でも甲は立場的に強いケースが多く、甲は乙よりも優位にあることが多いとされます。
しかし、甲乙にはどちらが上という決まりはないことから必ず甲が優位に使い分けられるとは限りません。
乙(おつ)の意味と読み方
乙は「おつ」(きのと)と読み、十干の第二番目の符号にあたります。
乙は甲に次ぐ二番目の存在であることから、等級や階級の違いを表す順番の二番目の意味として用いられることが多くあります。乙に関しても甲と同様に、どちらが上位下位という決まりはありません。
丙(へい)の意味と読み方
丙は「へい」(ひのえ)と読み、十干の第三番目の符号にあたります。
こちらも甲乙同様に、順番の三番目の意味として用いられます。
ビジネスで使用する契約書では甲乙のみが使われることが一般的ですが、国税庁の「源泉徴収税額表」では丙の欄が用いられることがあります。丙の欄は、2ヵ月以上連続して雇用しない従業員が対象となる欄になります。
甲乙丙それぞれの欄の使い方は異なるので、「源泉徴収税額表」を記載する場合は違いを理解して記入する必要があります。
「源泉徴収税額表」の各欄の使い分けについては、記事内でもご紹介しているので参考にしてみましょう。
契約書における甲乙の使い方
ビジネスで用いる契約書で使われる甲乙は、契約書上の当事者同士の会社名や氏名を置き換える役割を果たします。契約書上の当事者同士の名称に全て正式名称で記載すると文章が長くなってしまうことから、簡潔な契約書にするために甲乙を使用します。
契約書で使う甲乙には法的な意味はありません。
また、契約書には必ず甲乙表記を使う必要はないため、「ア、イ」表記や「A,B」表記、正式名称のままでも問題ないとされています。
契約書で甲乙をつけるメリット
契約書で甲乙をつけるメリットには、契約書を作成する手間が省けることがあります。
甲乙表記を使ったフォーマットをひとつ作成しておくことで、甲乙の対象を変えるだけで使いまわしをすることができます。別件で契約書の作成が必要になった時でも再利用しやすくなり便利です。
また、甲乙表記にすることでシンプルで簡潔な契約書になり、作成側だけではなく読み手側も読みやすい契約書になるといったメリットがあります。
甲乙表記の契約書を読み慣れている人にとっては、すぐに読み解ける契約書になるでしょう。
契約書で甲乙をつけるデメリット
契約書で甲乙をつけるデメリットには、契約書を読みなれていない人にとって読みづらいことがあります。
甲乙表記により、関係性も複雑で対象が誰なのかが分からなくなりがちです。対象が分からなくなると、また契約書の最初に戻り確認しないといけない手間が発生します。
場合によっては甲乙を取り間違えて理解してしまい、作成側が意図しない真逆の意味で契約内容が捉えられてしまう恐れもあります。読み手側に限らず、契約書の作成側も甲乙を間違えて契約書に書いてしまうことも起こり得るので細心の注意が必要です。
専門家の中には、契約書上に甲乙表記を使うことをおすすめしない意見もあるようです。
契約書により異なる略称を使うことがある
契約書の種類によっては、甲乙を用いず分かりやすい略称を使うことが適切です。
秘密保持契約書や売買契約書などのさまざまな契約書がある中で、契約書の型に合った表記を用いることで誤記防止にもなります。読み手側が理解しやすくなるといったメリットもあるため、作成する側は契約書に合わせた表記を工夫して作成しましょう。
契約書の種類 | 作成者 | |
秘密保持契約 | 開示当事者 | 受領当事者 |
取引基本契約 | 売主・委託者・発注者 | 買主・受託者・サービス提供者 |
業務委託契約書 | 委託者 | 受託者 |
金銭消費貸借(融資)契約書 | 貸主 | 借主 |
リース契約書 | 賃貸人 | 賃借人 |
売買(譲渡)契約書 | 売主・譲渡人 | 買主・譲渡人 |
供給(購買)契約書 | 売主・発注者 | 買主・サプライヤー |
賃貸借契約 | 賃貸人・オーナー | 賃借人・テナント |
工事請負契約書 | 発注者 | 受注者・請負人・工事業者 |
ライセンス契約書 | ライセンサー・特許権者etc | ライセンシー |
代理店契約書 | 売主・サプライヤー・メーカー | 買主・販売店・代理店 |
システム開発委託契約書 | 委託者・ベンダー | 受託者・ユーザー |
契約書における甲乙はどっちが上?
契約書における甲乙表記にはどちらが上位下位といった決まりはありません。また、甲乙にどちらが上、下なのかの優劣もありません。
しかし、甲乙の由来となる十干の順番を見ると、甲の方が乙よりも上位だと捉えられやすい風潮があります。そのため、契約書に記載する時などは甲を上位とし、乙を下位とすることの方が多くあります。
お客様を甲、事業者を乙とするのが一般的
甲乙表記に決まりはありませんが、「甲は乙よりも上位」と認識されやすいことから契約先によっては気にすることがあるかもしれません。記載方法によっては不快に感じるお客様もいるでしょう。
ビジネスで用いる契約書などでは「お客様を甲」「事業者を乙」とすることが一般的です。不動産賃貸借契約書の場合は「貸主を甲」「借主を乙」、業務委託契約書では「委託者を甲」「受託者を乙」とするケースが多く見られます。
甲乙表記に正確な決まりはありませんが、契約の相手を甲として表記する方が無難なので気をつけて表記しましょう。
源泉所得の甲乙とは?
所得税を計算する際には国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表」をもとに税額を計算します。
税額表上には「月額表」「日額表」の2種類があり、月額表は甲欄と乙欄、日額表は甲欄、乙欄、丙欄の3種類に分けられます。
人により控除される額は異なるので源泉徴収する税額が正しくなるように、それぞれの意味を理解して間違えずに記入する必要があります。
甲欄の意味
甲欄は「給与所得者の扶養控除等申請書」を提出している従業員に支払う給与区分の税区分を意味します。
パートやアルバイトでも主たる収入を得ている人の場合は、「給与所得者の扶養控除等申請書」を提出して甲欄を使った税額を計算する必要があります。
この申告をしなければ、諸控除や年末調整もおこなわれなくなってしまうので注意をしましょう。
乙欄の意味
乙欄は「給与所得者の扶養控除等申請書」を提出している従業員以外に支払う給与区分の税区分を意味します。
兼業や副業などをしている人、アルバイトを掛け持ちしている人など、複数の会社から収入を得ている場合には乙欄を使い税額を計算することになります。
どこに扶養控除等申請書を提出していて、どこが主たる給与に該当する先なのかを明確にしたうえで乙欄を使いましょう。
丙欄の意味
丙欄は、日雇賃金に対して使用する税区分を意味します。
丙欄が使用されるケースは限定的で、日額表で日ごとや週ごとに給与を支払う場合にのみ使われる欄です。
甲乙の意味を理解して正しく使い分けよう
甲乙にはそれぞれ意味があり、ビジネスのシーンでは主に契約書内で使用されることが多くあります。
契約書などで甲乙が使われる場合でも、基本的にどちらが上位下位なのかといった決まりはありません。もちろん、甲乙のどちらが優位なのかといった決まりもありません。
甲乙を契約書などビジネスの書面上で使う場合にはメリットもありますが、読み手側と作成側が意味を取り間違えてしまうデメリットも考えられます。両者が取り間違えない表記を使うことが前提になります。
契約書によって甲乙に限らない適切な表記方法があるように、お互いが内容を正しく理解できるような表記を心がけましょう。
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